コシヌケダイバー

やりたい事も好きな事も特にないと思ってしまう。飽きっぽくて天邪鬼な日常の振り返りメモ的雑記です

たぶん生まれて初めての宝探しだった。見つけて歓喜し、聴いては浸ったあのメロディー

お題「初めて買ったCD」

CMから聴こえる女性の歌声から“キャッチーなメロディ”の洗礼を浴びて、綺麗な女性よりも、ポテチよりも、心を奪われた

小学校4年生くらいの頃だったと思う。

夜ご飯を食べ、子供部屋で弟と一緒にTVを見ていた。

CM=トイレタイムだった。

しかし、その日ポテトチップスのCMを僕は観た。大人の女性が美味しそうにポテトチップスを食べている。僕はその瞬間ビックリした。CMから聴こえる歌が心地よいのだ。ずっと聴いていたい、そんな風に思った。

僕は、大人の女性よりも、美味しそうなポテトチップスよりも、CMから聴こえる歌に、耳も心も奪われた。

僕は初めての“キャッチーなメロディ”を体感することになる。

 

 西脇唯「風の住む星」

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「あのCMの歌はなんだろう・・・」

布団に入ってからも、次の朝になっても、

サビのメロディーと「風の住む星~」という歌詞が頭から離れない。

 

スマホで検索?

そんなモノはなかった。

ネットで検索?

PCなんて学校に数台しかなかった。

 

もう一度CMを観るしかなかった。

CMが流れたらお母さんをスグに呼んで聞こう!

僕は翌日からCMを観る為に家に帰るとずっとTVを付けていた。しかし、親にはTVは観すぎたらダメだと怒られながら消される始末。

CMから流れる歌が何なのか知りたいという僕の訴えは、親からすればTVを観続ける為の言い訳にとらえられてしまった。

僕は困った。

でも、あの心地いいメロディは頭から離れない。

もう一度聴きたい。心が強く求めたあのメロディライン

 

TV番組=トイレタイムになった。

CMを一瞬たりとも見逃すまいと、限られたTVの時間を僕はCM待ちに費やすことにした。

しかし、違うCMばかり。

さすがに様子が変な事に気付いた母親に、CMで流れてた歌が聞きたいと伝えた。 

それなら近くのレンタルビデオ屋さんにCDもあったような気がするから行ってみよう。と、早速自転車に乗ってレンタルビデオ屋へと向かった。

あんなに胸に期待を膨らませてワクワクしながらCDを、音楽を、“買いに行く”ことは、後にも先にも、あの時だけだろうと思う。

 

レンタルビデオ屋のレジにいた怖いお兄さんの「あー、これじゃねーかな」 

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今で言う所のコンビニを少し大きくしたサイズだろうか、マンションの一階部分にあるレンタルビデオ屋へと辿り着いた。

お店には対戦型のアーケードゲームコーナーがあり、タバコの煙たさと、ちょっと怖いお兄さん達の横を通り抜けて、CDコーナーへと向かった。

目的の歌に関してのヒントは、

●風の住む星という言葉

●ポテトチップスのCM

●メロディの鼻歌

さすがにメロディを口ずさんで曲を教えてもらうのは恥ずかしいので、上2つのヒントだけを母親に伝えて、ダルそうに椅子に深々と座りながら本を読んでいるレジのお兄さんに伝えてもらった。

ダルそうな割にお兄さんは親切だった。

雑誌を椅子の上に投げ、タイトルらしき言葉が沢山書いてあるファイルを片手にCDコーナーへと連れて行ってくれた。

そして5分も経たないうちに、お兄さんは1つのCDを手に取りこう言った。

 

「あー、これじゃねーかな」

 

CDが、、、あった。

 

そしてそのCDジャケットには、ポテトチップス、CM、といった言葉と、あの歌声の女性と思われる人が写っていた。

僕は嬉しくて仕方なかった。

一刻も早く帰ってCDが聴きたい。

母親が会員カードを発行してるのを待つ時間が異常に長く感じるくらい、早く聴きたかった。

 

あんなに胸に期待を膨らませてワクワクしながらCDを、音楽を、“見つけた”ことは、後にも先にも、あの時だけだろうと思う。

 

音楽の魅力を、その価値を、この曲を聴くたびに取り戻せる

 
あのレンタルビデオ屋もうない。
8cmのシングルCDもない。
音楽は買わなくなった。
 
それが良いことか悪いことかは、
僕にはわからない。
 
 
ただ、今でも、ふと、こうして聴きたくなる曲があることが、とても嬉しい。
 
この曲は、このメロディは、この歌声は、
 
CDを見つけて喜んだあの時の気持ちを、
心地よいメロディに延々と浸っていた僕を、
あのダルそうなレジのお兄さんを、
音楽で満たされた、あの嬉しい気持ちを、
 
今でも、優しく、思い出させてくれる。